ふじうら旅日記

7日目 その2






ロバートジョンソンの墓を訪ねて
南部の道を彷徨う一日。

クルマはクラークスデールから南に向かい、クリーヴランドに入る。案外大きな町だ。
スーパーのわきにあるビジターセンターに入る。ブルースの遺跡のよくできた無料地図があった。
こういう対応は地区によって全然違う。

ドッカリー農場
その地図に従ってドッカリーファームに行く。
ああ、ここがそうなのか。しみじみした気分になる。
写真で見慣れたドッカリーファームの看板がある。
当時の面持ちを残した農機具がある。
なぜか電線がつながっていないひとりぼっちの電柱があった。

農場の中を歩く。
孤独な電柱
この場所で、チャーリー・パットンやサン・ハウスが働き、歌っていたのだ。
どういう状況だったかはよく知らない。
黒人だけの集まりや、あるいは農園主ドッカリーの求めに応じて、歌い、
そしてブルースを歌うことで生きていたのだろう。

ドッカリーファームを歩く
後年、レコーディングする機会に恵まれ、商業ブルースの草分けとなった彼らだが、 彼らが当時最も優れたブルーズメンだったのかどうかは、いまとなってはわからない。
残されたものだけが、僕らの知る宝である。
しばらくドッカリー農場を歩いて、
聖地の気を浴びて、
ようやく人心地がついてきた。

ふたたびクルマに乗る。私の機嫌が良くなったのがヲサム君やダイスケ君にも反映する。

「綿花の花盛りだね」
「メンカの花道」
「がはは」
などとくだらない口をきけるようになった。

綿花は黒い茎に白い花。ポップコーンがはじけたように咲いている。良い季節だ。

ロバート・ジョンソンの墓はいくつもあるようだが(つまり本物はどれだかわからないわけだが)、これから目指すのはクラークスデールで買った「ブルース名所地図」に載っているやつ。
この地図は手書きですこぶる怪しいが、それだけに雰囲気はあるもので、つい惹かれてしまった。

地図に従うと、どんどんどんどん田舎道になり、なんだか殺伐とした雰囲気になってきた。
店もないし、たまにあっても貧乏そうで、軽く犯罪の匂いがする。
うーん、なんだかヤバイぞ、これは。

ガソリンタンクが少し空きはじめているから、入れるついでに道を聞く。

ガソリンスタンドに、まだ日が高いのにバドワイザーを飲んでいる男がいた。
酒臭い息で道を教える。
「この道を戻るとジーンがあるから、そこのグレイブロードを入れ」
ジーンってなんだ?
「そこにあるだろう、あれと同じだ」

穀物工場か。

そういえば途中に工場があったな。

そこまで戻って、斜めの道を入ると、
「あった!」ごく小さな教会があって、そこの庭が墓場になっている。
教会の前は砂利道。後ろはコットンフィールズだ。
ロバートジョンソンの墓があった教会
カーステレオに入れていたCDがちょうどロバートジョンソンになる。
その直前にかかっていた曲はダウンホームブルースだ。
なんだかドキドキする。

ロバートジョンソンの墓
いくつかある墓のひとつにせよ、自分がロバートジョンソンの墓に来ることがあるとは思わなかった。
少し力が抜けるような気がする。
ロバートジョンソンの墓に触って、ビールを供える。
クルマの席に座って、もういちどCDをロバートジョンソンの曲に戻して聞く。

もう一台クルマがやってきて、大男が二人出てきた。
テキサスから来たブルースファンだという。ちょっと話をする。
「お前たちも好きだなあ」という顔をする。
あちこちのブルースの名所の名をあげて、あそこにも行った、ここにも行った、と言う。
テキサスか、オースチンのブルースクラブ「アントンズ」には行くかと聞くと、
おお、地元だよく行くぞ、と笑っていった。
墓に触ったりする




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