Kyaikhtiyo
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登りの山道はけっこう険しい。
途中の茶店をひやかしながら登る。

麓の村落 黄金の岩のパゴダは山頂にあるという。ようやくその「麓の村落」に着いた。小さな広場の周りを5、6軒の店が囲んでいる。店では飲み物や土産物を売っており、店の裏手でトイレも貸す。

集落のすぐ近くに山道の入口があった。これを登ると黄金の岩のパゴダがあるのだ。

駐車場にクルマを預けてキンも同行するという。「駐車代が高い」とキンはぶつぶつ言っているが、実は彼もこのパゴダに行きたいのである。宗教心なのか物見遊山なのかはわからない。

子供を運ぶ 山道はけっこう幅広く、登る人と降りる人が容易にすれ違いできる。足腰の弱い老人のためには二人掛かりで運ぶ駕籠(というより大井川の渡しのようなもの)もあるし、小さな子供は背中に背負った竹籠に入れて登ってくれる。

そのような人足たちは麓で待っていて、足の弱そうな客に声をかけている。「蜘蛛駕籠」の世界である。

駕籠掻き 多くの人に削られたか、道は細かな黄色い土で覆われている。けっこう深く、数センチも積もっているところもある。その下は岩場だ。傾斜は案外きつい。黄砂で足元が滑りやすいので登るのは骨だ。

上り下りする客も多いが、それを当て込んだ飲み物屋や土産物屋が山道の途中にある。「峠の茶店」のような店もあって、日陰のほどよいところに木椅子などが置いてある。景色も良い。長い坂道を登りきって息を切らした客はついそこで一休みする寸法だ。

竹製の機関銃 子供客も多いのか、竹細工の玩具も売っている。目立つのは機関銃のおもちゃだ。竹の弾力を利用してパチパチと音を出す仕掛け。日本にもあったものだが、仏塔の門前で人殺しの玩具を売っているのはなにかそぐわない。

蛇、蜂の巣、干胆などをぶらさげている店もある。漢方薬店だ。店といっても山道の岸壁に張り付くような屋台である。

謎の肉塊 そこで一休みすると妙なものがあった。干物のような茶色の薄皮の中に、丸い握りこぶしくらいの肉塊が入っている。明らかに動物の身体の一部だが、なんだかわからない。


「それはなんだ」
「これはクーマだ」

「クーマ」とは「熊」のことか。
どうやら日本の客と見て日本語を使ったらしい。なかなか商売熱心だ。

「日本語でこれを何というんだ?」
何というって、これはいったい何だ?
様子から見て熊の睾丸かなあ。たぶんそうなんだろう。
「キンタマだな。クマのキンタマ」

そうかそうか。と店員の兄ちゃんはその言葉を覚えようと繰り返していた。日本人が通りかかったら「クーマのキンターマ」と言って売ろうと思っているのだろう。

30分ほども登ると傾斜がゆるくなってきた。ようやく頂上が近づいたようだ。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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