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おかしげな日本料理店で牛のカツ丼を出されて後悔し、
部屋のテラスで、げっぷのでるほどドリアンを食べる。

昼飯は日和って日本レストラン「NIKKO」に行く。きのう看板を見かけたときからどうも気になっていたのである。

考えてみると和食というのはもう3週間も食べていない。食べ物についてはうるさいことを言わない性質だしずっと現地食でもかまわないのだが、「和食があるな」と気づくと弱い。ついふらふらと行ってしまった。


店は日本車の展示場に隣接していた。似非(えせ)日本風の内装で竹とか京人形とか飾ってあって琴の音がする。別段ありがたくもない。インドネシアの女性が変な着付けの略式和風衣装で現われてメニューを見せる。

「カツ丼ください。」
「はい。ビーフとチキン、どちらにしますか?」

瞬間、反省した。

こりゃだめだ。自分たちのために豚肉市場を運営する中国人にはとてもかなわない。結局ビフカツの卵炒めみたいなカツ丼を食べる。あの、卵をとろっとさせるセンスというのは日本だけのものなのか。

サラダと味噌汁をつけて33,660rp(478円)。

帰り道にBATIK(インドネシアの染物)屋がいくつもあった。表通りの店は高かったので、ちょっと裏通りの「Danadi」で買い物をする。唐辛子プリントのシャツが7,500円(106円)。安い。おみやげ用にいくつか買い求める。文房具屋で封筒を買い、ホテルに帰って荷造りをする。明日WASHILANのクルマで郵便局に寄って、日本に送ろう。


ホテルで昼寝していたら、雨の音で眼が覚める。スコールだ。すっかり涼しくなっている。

雨を見ながらテラスでドリアンを食べる。うわ、すごく熟している。とろとろのチーズのようだ。これが現地の人のいう「よく熟れている」ということなのか。食べている指が溶けていくような感じだ。

大きな一個を一人で全部食べてしまった。げっぷをするとドリアン臭い。とくに狂うほど美味とも思わないが、わりと好きな味だ。もっとたくさん食べると、はまるのかもしれない。

汁がたれて虫が寄ってきそうなので、こぼさないよう気を付けて、ゴミはスーパーのビニール袋に入れてきっちり蓋をする。

庭を掃除していたホテルのボーイにその袋を渡すとなんにも言わずに持っていった。「部屋にドリアンを持ち込まないでください」という風はない。もっとも外で食ったのだから匂いもなにも残らない。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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