Surabaya
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街に酒はないが街娼はいるスラバヤの夜。
地元ミュージシャンを聞きながらアジア人ポップスを考える。

もう夕刻になっていた。しばらく歩くとRadisson Hotelにうまそうな中華があった。「28,000rp(397円)で食べ放題」。味もサービスもすごくよかったのだが、腹が一杯で食べられない。ビッグマックを食わなければよかった。

店には女性ボーカルとキーボードのバンドが入っていた。こういうボーカル+1(+リズムマシン)という2ピースバンドは、ホテル、船の食堂、ちょっとしたクラブなど、アジアの至るところにいる。ひとつの定型である。リズムマシンの音色はドクターリズム(ローランドのチープなリズムマシン)並みのぺこぺこなものだ。


腹ごなしに歩いて帰っていたら、街娼に誘われた。

インドネシア語で「いくらいくらでいいから」と言っているようなのだが、よくわからない。英語は話せないらしい。よく見ると暗がりのバス停のようなところに何人も固まって客待ちをしている。「バスを待つ」という体裁をしているのだろう。


夜の公園 ともかくそこを離れて、明るいほうへ行ってみたのだが、なんだか街が盛り上がっていない。酒場という文化が地元にない。外国人向きの店はあるが高い。さっきの中華も料理は約束どおり28,000rpだったが、ビール2杯で22,000rp。酒飲みには冷たい土地である。


またポン引きがやってきた。参考のために値段だけ聞く。「ワン&フィフティ サウザンド」。とにかく数字がでかい。150,000rpか。つまり、2130円だ。他の物価と並べて書いておく。

プレステ本体2,500,000rp35,500円
同 ソフト200,000rp2,840円
街娼150,000rp2,130円
BIGMAC9,000rp127円
ビール(店で)10,000rp142円



上の計算は通常の為替レートで円にしてみたものだが、これだとプレステ本体もあまり高い感じがしない。私はこれとは別に「体感レート」というのを使っていた。それは現地での値段が高いか安いか感覚的に判断するためのものだ。

スラバヤでの私の体感レートは1rp=0.05円に決めた。本来の為替レートは0.0142円だから実勢とはまったく違うものだが「1桁減らして半分に」するだけなので計算も楽だし、これはこれで案外役に立つのである。体感レートだと次のようになる。

プレステ本体2,500,000rp12万5,000円
同 ソフト200,000rp1万円
街娼150,000rp7,500円
BIGMAC9,000rp450円
ビール(店で)10,000rp500円


これは不正確だが、体感的な換算だ。ビッグマック450円は少し高いが、ビール500円というのは日本の価格に近いだろう。それに比べてプレステ12万円という価格の高さ、街娼7,500円という価格の安さ。ゲームソフト一本より安いのである。
もっともこれは誘いの価格で実際にはもっと高いのかもしれないが、「人間がいちばん安い」という傾向はアジアの価格の至るところにあった。


ちなみにマッサージの値段を各国比べて、通常レートで換算すると

サンボアンガ300ペソ (ホテルの壁に書いてあった価格)960円
タワウ15リンギット(脚マッサージ)561円
スラバヤ30,000ルピア (ホテルのおばさん)425円


となる。スラバヤはホテルのマッサージなのに、これは安い感じがする。これはルピアの暴落のせいで、対外物価が安くなっているのだろう。インドネシア国内で比べるとビッグマックの3.3倍だし、輪タクの30倍。そう安い値段ではない。体感レートとしてはアジアのマッサージを「おおむね1時間1000円程度」と考えた。

しかし、こうなるとウジュンパンダンのボニータの値段だけでも聞いておけばよかった。惜しいことをした。


ところで、街娼やポン引きは「マッサー」と言いながら近寄ってくる。どうもマッサージと売春は同義らしい。タワウのホテルのロビーで「このへんにマッサージはないか」と聞いたとき近くに若い女性がいたのだが、「スケベなやつ」と思われていたのかもしれない。

念のためにマッサージの値段をフロントに確認したら、そのとおり30,000rpだった。あのおばはん、けっこう正直なところもあるのだなとおかしくなる。


スラバヤの店先 テレビを見ると、どのバンドもサルサをやっているチャンネルがあった。サルサバンドなのにタブラを使っていたりして面白いと見ていたら、いやこれはインドネシアのレギュラーな歌番組だった。うまいじゃないか、と驚く。

インドネシアのリズム感は独特の粘るもので、フィリピンとはまた違う。サルサのような曲には案外合うらしい。


スーパーではビールしか売っていないので、「固い」酒を飲みたくなってホテルのバーに行く。地元のアコースティックバンドがやっている。いいとこもあるが、音楽としてはつまらない。リズムも合っているし、お互いの音を聞いてもいるのに、なぜだろう?ここが難しいところだが、魅力って何だ?バンドのアピールって。

Jack Daniel'sを3杯飲んで70,000rp。なんだかすごく高い酒を飲んだような気がしたので部屋に帰って計算する。994円。なんだ、日本で飲むよりずいぶん楽ではないか。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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