Tarakan
次へ


出発時刻になってもボラック航空の係員は来ない。
ほんとうに今日、飛行機は飛ぶのか?

出発の1時間前にタワウ空港に着いた。出発カウンターはわずか4つ。どのカウンターにもカラーロゴ入りでマレーシア航空の表示がされている。いちばん左のカウンターは、そのマレー航空のマークを隠すようにぺらぺらの白い紙が貼りつけてあって、そこにタイプでBORAC AIRLINEと文字が打ってある。なんとさびしい表示だ。
「さすがボロ航空だなあ」

しかもその席には誰もいない。出発時刻までもう間もないというのに。


空港のレストラン表示 そのカウンターの席は空いているがときどきそこに座る者もある。空港関係者には違いないので念のために 「ボラックの搭乗手続きは」と聞くと、「私はマレーシア航空の係員だ。ボラックのことはわからない」という。
そんな小さい会社のことは知らんと言わんばかり。偉そうな態度だ。もともとマレーシア航空の施設なのだから俺たちが座るのは当然と、でかい顔をしている。ボラック間借り航空の客にはすこぶる不親切である。

「最近貧乏人扱いされることが多いなあ」
苦笑しながらボラックを待つ。まあボロとかバラックとかいう名前からして貧乏そうではある。

それにしても遅い。もう出発時刻なのになんの気配もない。客の姿もない。ほんとうに今日飛行機は飛ぶのか?ひょっとして曜日を勘違いしているのか?だんだん不安になってくる。


「用があるならそこに電話してくれ」。

よく見るとボラックのマークの下に小さく連絡先が書いてある。しかしこれは、メルデカ旅行社ではないか。いまさらメルデカに電話してもしょうがないと思うが、他に手がかりもないのでメルデカトラベルに電話をかける。

「ジャマーンさんいますか?」
「空港に行きました」

あ、そう。なにしに来るんだろう。さっぱり事情が把握できないが、彼が来れば話もわかるだろう。とりあえず待つことにする。



c 1998 Keiichiro Fujiura


GO MAP表紙へ
GO MAPマップへ
GO PREVIOUS前へ
GO NEXT次へ