Yangon
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ミャンマービールを飲んでゴキゲンになる。
それはいいのだが、帰りにどこかに帽子を置き忘れる。


帰りの船はいくらかすいていた。夕刻になったので川風も涼しくて心地よい。見る と川中に若い男女の乗った小舟が浮かんでいる。きっとデートだろう。

男が彼女の ために一所懸命漕いでいる。なんだか微笑ましい。女性もどうやらおめかししてい る様子だ。泥川のデートだが、夕陽に照らされて美しく見えた。

近代的な女性も少数いる 町に帰って船着き場の近くを歩いていたら、どんどん建物が高くなっていく。なん だか立派な建物だなあと思っていたら驚くほど立派な通りに出た。建物は石造りで 道幅も広い。まるっきりヨーロッパの町並みのようだ。

おそらくこれは植民地時代の遺産なのだろう。シンガポールなどではその後の経済 成長で建て直されたものが、ヤンゴンでは当時のまま残っているものらしい。

夕刻の公園の道 ようやく暗くなってきたので、さきほど公園のところで見つけておいた店に行くこ とにした。

そこはMAW SHWELIという名前のビヤホールで、混んでいたので相席になった。 相手は、男女のペアと、誰か(おそらく女性)を待っている40がらみの男。

見ているとミャンマーの人は食べるのが遅い(よく言えばゆったりしている)よう だ。フライドライスも、がっと頬張るのではなく、飯と具を分けるようにしながら 少しづつ食べている。あれは「ご飯とおかず」なんだろうか。

ここでは「ミャンマービール」が飲めるというのでそれを頼む。ひさしぶりの生ビ ールだ。案外コクがあっておいしい。つまみに烏賊のオイスターソース炒めを頼み 、仕上げに鳥ツユソバを食べる。このメニューから見ても中国系の店らしい。烏賊 は小さくてゲソみたいだったが、ツユソバはうまかった。

ビール一杯75K(30円)、全部で825K(330円)。マスターは英語が話せる商売人で「明日もまた来い」という。

男も頭に乗せて運ぶ ビールを数杯飲んでほろ酔いで外に出たら公園の暗がりでギターの音がする。見る と少年たちがギターを持っているが、どうもまともに弾ける奴がいないようだ。一 杯入っていることでもあるし、そこへ行って「ちょっと弾かせろ」という。子供た ちも驚いたが外国人でもあるし試しに弾かせてみようということになった。

街路樹 を囲む石に腰掛けてちょっと弾いてみたら、弦高がひどく高い。フレットの細工も 荒くて指が切れそうなくらいだ。もっていた紙をちぎって三角にし、それをピック の代りにして弾き始める。

曲はあいかわらず「Before You Accuse Me」だ。なにしろ、この頃ちゃんと歌詞を 覚えている曲はこれだけだったので、この旅の間じゅうどこへ行ってもこの曲を唄 っていた。

唄っている途中から少年たちがすごくノッてきたのがわかった。外国人の唄うブル ースやそういうギターを生で聞くのは初めてなのだろう。唄い終わると「もっとや れ」と言うのだが、こちらは一曲しか唄えないので残念ながら断わって帰った。


ホテルに帰って気付いたら帽子がない。緑のキャップで、帽子そのものはたいした ものではないのだけれど、これまでの旅の町々で買ったバッジを付けてある。マニ ラで買った独立100年バッジ、インドネシアの国旗バッジ、バドゥイの村長宅ソソロ で行商人から買った家族の名の木彫バッジ。それらはかけがえのないものだ。

トーキョー フライド チキン ホテルのフロントからさきほどの店に電話してもらったが「ない」という。してみ るとギターを弾いたときにどこかに置き忘れたものか。もうしょうがない。

それは あきらめたのだが、フロントの女性たちが「ずいぶん飲んだのね」という顔でくすくす笑って いるのは、なにか不当な扱いを受けているような気がする。正確な事 情も知らないくせに女ってやつはなんで勝手に決めつけるのだろう。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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