ふじうら旅日記

2日目 その1






さて御蔵島については何の知識もないが、
とりあえず宿のまわりの集落を散歩してみようか。

2日目 5月17日 金曜日

目が覚めると細かい雨が降ったり止んだりしていた。海面を見るが波頭は崩 れておらず船が着かないほどの天候とも思えない。雲は重くたちこめていて港 の向こうに見える三宅島は白く霞んで淡い影になっている。この村落は島の北端 にあるのだ。

村営宿舎のロビーには巨樹の絵が並んでいた。スダジイといってこの島の名物 らしい。宿舎にあった案内地図を見ると御蔵島を一周する道路はなく、西岸 のえびね公園まで行く道と東岸の南郷まで行く道がそれぞれ伸びている。

御蔵島の地図はこのページを見てください。

この地図で見る限りどちらも徒歩で片道1時間半くらいか。晴れていれば緑の中の 快適な散歩だが、雨の中を両方歩くのはちょっとしんどい。とはいえこの宿舎に 一日いてもしかたないからどちらか片方へ歩いて行くことになるのだろう。 「どっちがいいかな」「南郷のほうに湖があるから、そっちにしましょうか」 「そうだねえ」

ともあれまだ朝の9時半だ。島にひとつだけある食堂「やまや」は11時に開くというので、 それまでは近所の村落を散歩して、朝飯を食ってから出発することにしよう。

傘は二本ある。いまのところ雨は止んでいる。港への急な坂の隙間に細い道 がうねる小さな漁師町の地形だ。店が数軒あって主婦らしい人たちが買い物 をしていた。「こんにちわ」「こんにちわ」。ちゃんと挨拶を返してくれる。 あちらこちらの道路に、ビールや卵の箱が置いてあるのが目立った。

文房具屋を兼ねた「御蔵島特産品ショップ」があった。見せてもらうとツゲの 印材や将棋の駒が置いてあった。将棋の駒は文字が彫り込まれていない 状態で、4万5千円という値が示してある。

宿舎の隣に小さな神社があって、「海難漂流者の碑」があった。オレ達もその 仲間だね、と笑いあう。

桟橋まで降りて行くと先ほどの釣りの一行三人がすでに竿を下ろしていた。近付いてみると、もう釣れている。30センチを超えるいい型だ。

「これはメジナですか?」
「メジナならいいんだけどね。イスズミかなあ」

イシガキダイらしい魚も釣れていた。魚影はよほど濃いようだ。
海の男ヲサム
巨大なトライポッドが並び、水は船着き場とは思えないほど澄んでいる。





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