ふじうら旅日記

4日目 その5






YTホテル 最高の部屋へ。
食堂に行ったら「お父さん」と呼ばれる。

雪駄での遠足も終って、ようやくYT HOTELにたどり着いた。主人タシクンガは今日もゴキゲンである。「おお、来たな」と握手する。案内されたのが「これが最高の部屋?」。あんまり変わり映えもしないが、まぁいいや。いちおう部屋にバスタブがあるし。

タシクンガ氏とちょっと話をする。「隣の建設中のホテルもあなたのものか」「いや、違うんだ」。ホテルの山側にあるディスコも最初は彼のものかと思っていたが違うらしい。思ったほどの羽振りではないのか。しかし彼は外国にもよく行くという野心に燃えたビジネスマンのようだ。

またトヨノボリの話が出たので「いつ来たのか」と聞いてみると「去年の秋」だと言う。うーむ。どうもおかしい。オオヒラさんの女性ガイドが舞の海の案内をしたことがありそのとき貰った時計を自慢しているという話を聞いたが、このトヨノボリはどうやらマイノウミの間違いのようだ。

話も終って夕闇も近づいてきたが、夕食まではまだ間があるようなのでとりあえずビールを飲みに食堂に行く。ここの食堂は10ほどもテーブルのある大きなものだ。

従業員に「ビールを」と頼んだら、そこにいた娘が私をじっと見ている。なんだろうなと思っていたら、「あなたは私の父に似ている」と言い出した。 「父ぃ?」お父さんかあ。あんまり色っぽくないなあ。で、君のお父さんはどうしているの。「去年死にました」。そーか、そーか。私は君の死んだお父さんに似ているのか。

娘の名はソナム。写真を撮って並べて見るとなんだか私の顔に似ているような気もしてくる。

ソナム
"My daugther" SONAM
表が騒がしい。見ると自転車の一群がホテルに帰ってきたところだ。この連中とは今日ワンデュポダンのゾンの近くでも遭遇したし、道でもすれ違った。最初は「一日200ドルという滞在費を払って自転車?」と疑問に思ったが、道を走っているところを見ると、後ろにエトメトの伴走車が付いていた。自分の移動は自転車でやるが、荷物や宿泊の手配は旅行代理店にやらせている、ということらしい。贅沢といえば贅沢な旅である。フランス人らしい。

食事の用意ができた。向こうのテーブルでは自転車の一行が笑いさんざめいているが大部屋なのであまり影響もない。例によってバイキングである。ぜーんぜん辛くないので腹が立つくらいだ。そこへコバヤシ夫婦も姿を現したのでテーブルをくっつける。「日仏対抗ですね」。さすがにブータンまで来る人たちはこれまでにあちこち旅している。楽しい夕食となった。

ディスコの音が気になる。
ちょっと行ってみるか。

夕食後、オーナーが「こっちへ来い」という。建て増ししたような階段を上っていくと「Sitting Room」があった。サロンのような感じだ。バーカウンターがあり、ソファがあり、そして衛星放送のテレビがある。床は絨毯が敷いてある。BBCを見ながら輸入ビールを飲む。これがブータンの金持ちの居間というものか。後でまたのぞいたらオーナーの息子がインド系のチャンネルを見ていた。

夜も更けてきたので部屋に帰ったのだが、どうも窓の外がうるさい。ちょうどその方向にディスコがあって、音楽が漏れてくる。なんとなく先ほどの自転車の一行がそこに遊びにいっているような感じもした。うーむ。そういえば昨日「デンジャラスナイト」をしなかったなあ。

ヲサム君の部屋に行き「クラブに行こう」と誘って、ミンジュとともに出かける。すぐ上にあるので歩いていく。安アパートのような建物があった。

暗い入口。細長い階段。なんとなく秘密クラブみたいで面白い。しかし、ドアを開けてがっかりした。僕らが学生の頃に学園祭でやった程度のチープな内装。音だけはでかいが、客は誰もいなかった。「深夜になると客は増えるそうだけど」。この状態で待ってもいられない。帰ろう帰ろうと部屋に戻った。すっかり空振りである。

深夜になっても食堂が明るいので覗いてみると、8人ほど集まってカードをやっていた。しばらく観戦する。このゲームの名前は「マリッジ(結婚)」というそうだ。ホイスト系(つまりセブンブリッジの仲間)で、手札21枚。3パックを使うかなり大掛かりなものだ。基本的なルールはホイストと同じだが、オープンカード/共通カード/役の特例ルールが多くなかなか複雑で、ちょいと参加するには難しい。

オーナーは負け組。オーナー妻はそこそこ勝って元気が出ているところ。ミンジュも張り切ってやっていたがあまり成績は良くなさそう。コバヤシさんたちのドライバーは痩せた(たぶん口の利けない)男だが、彼は調子良さそうだった。ずいぶん遅くまでやっていたようだ。たぶんエトメトに知られたら誉められることではないのだろうが。

朝食のとき、ミンジュは眠そうだった。女主人に「どうだった?」と聞いたら「勝ったわよ。200」とにんまりしていた。 タシクンガ氏に言わせると「オレはリモートコントロールされてるだけさ」なのだそうで、本当のビジネスマンはこの夫人なのかもしれない。





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