バンチャン

休暇中に作曲家の平野君と菜月ちゃんが遊びに来ることになった。

休み中でヒマなので丁寧に準備できた。盛夏のことだから、前菜に冬瓜の煮冷し、鱸の昆布〆、つまみは生春巻、と冷たいものにする。春巻の中身は海老にするのが普通だが、高かったので豚と浅利にした。

まずはタレをつくる。ひとつはニョクチャムの変形で、おろしニンニク、ニョクマム、酢、唐辛子、砂糖、酒、出汁を煮てレモン汁で味を整えたもの。もうひとつは味噌ダレで、こちらにもおろしニンニク、酢、砂糖、酒、唐辛子が入るのは同じだが、ニョクマムの代りに赤味噌、豆板醤、胡麻、コーレーグース、刻んだカシューナッツを加えて煮詰める。ニョクチャムのほうはキッチンペーパーで漉して粗熱を取り、大根と人参を膾(なます)のように切ったものを添える。

これは料理一般に言えることなのだが、アジア料理ではとくに食べる人の好みを知らなければならない。ニョクマムを半量まで使ったら残りの味付けは醤油にしないと「臭みが過ぎて美味しくない」と感じられるかもしれない。癖のある食材は控えめに使ったほうが余韻が残る。

小さいほうが食べやすいのでバンチャンを四つ切にする。20枚で80回巻くことになるのでなかなか手間がかかる。豚コマをニョクマム湯で軽く下味をつけて茹で、小さく切っておく。それにレタス、胡瓜、モヤシ、エシャレット、ミント葉などを用意して、適当にあれこれ入れながら手巻きする。大葉や韮を入れるのもいい。

半分は豚、半分は浅利にした。浅利も茹でてちょっと下味をつけてある。バンチャンを手に取ってまずミントを置くと、外から葉が見えてきれいだ。エシャレットは思いつきで入れてみたのだが、サクサクするし、ちょっと香りがあってなかなかよろしい。

バンチャンは米粉で作った薄い皮だ。クレープの皮を乾かしたような円いかたちをしている。紙状なのでライスペーパーともいう。乾燥していて保存がきく。食べるときは水分を加える。濡れるとくっつきやすくなるので少量づつ戻す。一度に3〜4枚づつスプレーしてから鋏で切り、必要に応じて水につける。

春巻は手巻寿司と同じくらい簡単な料理だが見栄は良い。大皿に生春巻が並んでいると、いかにも「おもてなし」という感じで豪勢だ。余った味噌ダレは野菜スティックにつけて食べてもおいしい。

平野君はいつもは酒をあまり飲まないのだが、この日は酒がすすんだ。賓客がゴキゲンになれば料理を作った甲斐があるというものだ。

(2001年9月3日)




バンチャンの作り方
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ゴイクン(生春巻)の作り方を書いたページはたくさんありましたが
ライスペーパーの作り方を書いてある、このページはちょっと珍しいものでした。




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