Baduy
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うってかわって海辺のリゾート。
入江のレストランで白エビを食す。

ジャカルタからここへは直線的に来たが、帰りは迂回してジャワ島の西部海岸を通っていくことになった。天気がよければスマトラ島も見えるはずである。

海岸に近づいたあたりで、大漁旗のような派手なセールをつけた漁船がたくさん港に泊まっているのを見かけた。
「おもしろい。あれを撮ろう」
「なんだか魚が食べたくなったね」

コックのトトにはわるいけれど、バドゥイでは保存食のようなものばかり食べていたのでなにか新鮮なものが食べたくなった。



白エビを採る漁船

漁師が竹を並べた船着き場に上がってきた。

「なにが採れたの」
「白エビだ」


うまそうだが、ここでエビをわけてもらっても料理できない。ドンさんに「どこかシーフード料理を食べられるところはないか」と聞く。いいところがある、とドンさんは胸を張る。ドンさんはあらゆることに胸を張る。素晴らしいガイドである。


しばらく進むといよいよ海らしくなってきた。「白砂青松」という感じである。松のかわりに椰子の木が立っているけれども。


海水浴場のような場所にクルマを入れる。子供は砂で遊び、おばさんたちは飲み物を売り、若者はデートをしている。やっていることは日本とあまり変らない。

私たちが入っていくとおばさんたちはさっそく「なにか買わないかい」と声をかけてくる。


海岸へ行くと白い砂。遠くにきれいなコニーデの山が見える。
「あの島が噴火したのです。灰はこの町まで飛びました」
インドネシアもけっこう火山が多い。スマトラへはここからフェリーで40分ほどだというが、この日は見えなかった。


そのあたりの家の郵便箱 海水浴場を過ぎると、町はだんだん高級リゾートの様相を呈してきた。しばらく走ると緑の多い崖に白い階段がある。


「ここです」

へえきれいなところだねえと、ぞろぞろ階段を登る。登り切ると目の前に海が開けた。そこに白いレストランがある。海に向けてガラス窓が大きく広がり、花を飾られ、制服を着たウェイターがいる。

我々はバドゥイの村から直行しているので撮影用のベストに、山歩きでよれよれになったシャツ。土のついたジーンズ。一同、ちょっと気おされながら、それでも美味いものを食えそうだという欲望に背中を押されて店内に入る。


明るいテーブル。きれいな布のクロス。透明な食器。銀のスプーン。わずか3日ほどバドゥイの村にいただけなのに、まるで別世界にいるような気がする。


ひとりがトイレに行って返って来るなり
「トイレ、きれいだよ」
とぼそっと言った。それを聞いてみんな、忘れていたものを思い出したようにトイレへ向かう。清潔だ。
やっぱりきれいなトイレっていいねえ、と一同ほっとする。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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