Bangkok
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バンコクに着いた。
有名な安宿街カオサンに行き、当夜の宿を決める。

ファランポーン駅を出たら陽射しがかっと暑い。大量の自動車が道を流れていた。列車の中で地図を見ていたので、南に行けば川があるから少しは涼しいだろうと見当をつけて歩く。

ところが予想に反して中華街のような景色になってくる。どうやら方向を間違えて西に来てしまったらしい。磁石で調べればいいものを見当で歩くからこういうことになるのだ。チャイナタウンにも安宿の看板は多かったが、とりあえずは目的地のカオサンに行くことにする。

駅の構内に両替所があったので手持ちのリンギット195RMをバーツに交換した。1,994Bになった。バーツはほぼリンギットの10分の1。例によって少し不利なレートだった。この原稿では1バーツ3円で計算しておく。

虫採りをする子供たち ちょうどこの1998年3月というのはタイに駐在する日本企業にとって厳しい時期だったらしい。前年7月にはじまったバーツの切り下げにより、1ドル=26バーツだったものが半年で1ドル=36バーツのバーツ安となった。各企業は3月決算を迎えその処理に苦慮していたという。 2000年10月現在 1バーツは2.6円くらいだから、当時よりさらに下落したわけだ。

それはさておき、手元にバーツができたので行動は気楽になった。同じ価値でも195よりは1,994のほうがたくさんあるような気がする。チャイナタウンからメータータクシーに乗ってカオサンに向かう。



タイ概略図
カオサンはバンコクの安宿街である。アジアを貧乏旅行する者にとってのHUBというべき町だ。

バンコクの立地の良さは特筆すべきで、東はカンボジアラオスベトナム香港台湾日本、北は中国ネパール、西はミャンマーインド、南はマレーシアシンガポールインドネシアとくにバリと続くアジア旅行の中心地に位置する。 しかも名うてのホスピタリティの国で、英語が通じ、酒は飲め、麻薬は産地で、女の子が優しい。

世界の放浪者が集まる素地は十分すぎるほどある。

それをさらに煮詰めたような場所がこのカオサンだ。

「部屋にはベッドと扇風機だけ」というゲストハウス、も少しましなドミトリー、ホテル、コインランドリー、国際電話、国際荷物、インターネットカフェ、ツアー業者、安航空券屋、外人向きバー、安食堂、ディスコ、安価なタイ式マッサージの店が、狭い地域に密集している。

とはいっても恐い町ではない。日本人女性旅行者なども多いし、バーは安く若者も多い気さくな町だ。数日滞在すれば外国人の知人友人など簡単にできるだろう。「貧乏な六本木」といった感さえある。 実際、港区のバーなどで働いている外人女性に「東京に来る前はどこにいたんだ」と聞いて「アジアを旅行していた」という場合、カオサンの話題を出すと盛り上がることは珍しくない。


そのカオサンに着いた。チャイナタウンから78B(234円)。カオサンパレスは「チェックインは12時から」というのでサイアムオリエンタルに入る。一泊500B(1,500円)

水シャワーの部屋ということだったが、使ってみたらちゃんとお湯が出た。ベッドのまわりに1メートルくらいの隙間があるだけの部屋で、ベッドの真上に天井扇風機が付いている。天井は低いから風はまともに寝台にあたる。そういう部屋だ。

トイレの注意 トイレに注意書きがあった。「トイレットペーパーを便器に流すな」と書いてある。もともと水の国だから紙は処理しきれないのだろう。役に立たないなァ。

そうもいかないので、気を付けて少しづつ流すことにする。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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