Jakarta
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自由行動の夜、ひとり残されたヲサム君と
カタンカナリを求めて街へ出る。

ホテルに帰ると、ヲサム君が一人でいた。

ヤマモリさんはジャカルタのお友達と食事の約束があると出かけたというし、ダイトウ夫妻はフィルムの整理もあるので自室で休んでいるそうだ。早朝撮影も多かったしお疲れなのは無理もない。


「それじゃあ食事にでも出かけますか」

雨も降っているしホテルの近くをぶらぶらというような景色でもない。周りの道は交通渋滞だ。ヲサム君は車寄せにいたベルキャプテンにつかつかと近づいて「カタンカナリ?」と話しかけた。
なるほど。そのテーマがあったなあ。

「え、何ですか?」
「カタンカナリを食べたい。どこに行けばいいですか」
「カタンカナリ、ですか?」
「そうです。スラウェシ料理の店を教えてください」
「ちょ、ちょっと待ってください」


ベルキャプテンの想定問答集になかった質問らしく、ガイドブックを見たり電話をかけたりしていたが、そのうちメモを書いて渡す。どうも、あまり自信なさそうである。

「店の名前はわからないのですが、この通りにスラウェシ料理店があるそうです」

なんだか頼りないけどまあ行ってみよう、とタクシーに乗り込み運転手にそのメモを見せる。
運転手がメモを見てなにか聞いてくるのだが、わかるはずもない。ヲサム君は運転手に「カタンカナリ」と答える。このあたり、いい度胸である。



c 1998 Keiichiro Fujiura


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