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歓待を受けて居心地もよく、腰を落ち着けたい雰囲気なのだが、実は気になることがあった。 |
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明日の朝は出発だというのに、まだ装備を用意していないのである。 ドンさんは「登山靴はあるからいい」と言ってくれたのだが、靴下は薄いものしかないし長袖のシャツもあったほうがよい。この旅であまり厳しいところを行くつもりはなかったので雨具は傘しか持っていない。山中を歩くのならば、両手が使えるポンチョが欲しい。 それらをなんとか今日のうちに調達したいのだ。 |
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幸い、「では明日が早いので」と長居することなく退去してホテルに向かった。ホテルのあたりは都会である。背の高いビルが並び外国企業のネオンが輝いている。さすがインドネシアの首都、それも中心部だ。 |
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今日の泊りは日航系列。日本人がうじゃうじゃいる。こんなに大勢の日本人はひさしぶりで見た。 一泊105USドル(税サービスを付けて15,000円)。この旅で最も高額の宿泊代である。それなのに、フロントはラフな格好で大荷物の我々に無愛想、横柄。「なんなんだこれは」という感じだ。 |
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しかしそういうことを言っているひまはない。もう家に帰ろうとするドンさんに頼みこんで登山道具の店に連れていってもらう。 何時だったのだろう、もう外は暗い。店はいまにも閉まりそうな時分だ。そのうえあいにく小雨がパラつきはじめた。 |
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ジャカルタの街に慣れない私を連れて、ドンさんは大変だ。雨の中混み合うバスを待ち、「Sarinah」という大きなショッピングビルの前で降りる。駆け上がるようにしてアウトドア用品売り場へ。 すごい勢いで物を買い集める。登山靴用の厚い靴下を2枚買い、ポンチョを買い、バックパック用の雨カバーを買う。ダイトウさん夫妻がカメラバッグ用の雨カバーを持ってきていないことを耳にしたので、それも余分に買う。 山中の雨のときに取り出したら感謝されるだろうという目論見なのだが、あいにく、というか運良くバドゥイの村にいるあいだ強い雨は降らなかった。そのうえに長袖の登山シャツも買う。 |
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あまりの買い漁りぶりをドンさんが呆れているような気もするけれど、なにしろ閉店間近なので冷静ではいられない。ミラノのブティックの日本人観光客を笑うことができない成金買いである。 ようやく装備が整った。 総額120,000rp(1704円)。昨日までの田舎町ならたいした買い物のはずだが、ジャカルタのショッピングビルのなかでは驚くほどの金額でもないように思える。 |
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買い物が間に合って、ドンさんはほっとした表情で帰っていった。深謝。 彼もしばらく家を離れていて、今日一晩だけ自宅で眠って明日はまた出かけるのである。 |
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