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BINHOUSEの女主人ジョセフィーヌさんは今日も笑顔だ。彼女の「インドネシア風タイ料理」をご馳走になる。おかしなネーミングだが、そのとおりの風味で、美味い。タイほど辛くなくて、香辛料の使い方もちょっと違う。 |
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BINHOUSEは高級バティックの店である。バティックの一点物で、それぞれ意匠を工夫した染めとなっている。銀座にも支店がある、インドネシア有数のブランドだ。 何点か買い物をしたものはバドゥイの山刀と一緒に持って帰ってもらい、後日東京で受け取ることにした。ヤマモリさん最後までありがとうございました。 |
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ジョセフィーヌさんのご主人、ロニーさんと話をする。 ここで初めて知ったのだが、ロニーさんはインドネシア少数民族の権威なのであった。研究者で大学でも教えているという。ヤマモリさんがバドゥイの村を訪れるにあたってBINHOUSEに相談したわけが、ようやくわかった。 |
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よい機会なのでバドゥイの村で感じたことをロニーさんにたずねてみる。 「私たちはバドゥイに何ができるのでしょう」 「変るのを止めることができなければ、記録することが次善の策です」 |
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ヤマモリさんはバドゥイに聞いたのと同じ質問をロニーさんにもしていた。 「乗り物に乗るなという戒律を村の外で破り、誰もそれを知らないとしても罰することができるのか」 「誰も知らなくとも、自分は知っている。それはdignityの問題である」 |
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ディグニティとは、尊厳、威信、品格である。 バドゥイの戒律を守るかどうかは自らの尊厳の問題だ。というのがロニーさんの答えだった。自らを厳しく律する精神によってバドゥイの伝統は守られているというのだ。 |
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ワインの酔いも加わって、ロニーさんの論調はだんだん厳しいものになってきた。 「あなたがた日本人がバドゥイの伝統を心配されているようだが、その前に、あなたがたの国の少数民族の伝統、たとえば沖永良部島の風習が崩壊の危機を迎えていることを心配したほうがよいのではないのか。」 |
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「数年ほど前、ボルネオでひとつの町が全滅したことがあった。少数民族の禁忌を犯したために町中皆殺しにされたのだ。警察の力などそこには及ばない。皆、少数民族の力を過小評価しすぎている。」 |
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私たちの文明と、それ以外の文明の接触。少数民族の多いインドネシアでは案外頻繁に起こっている問題らしい。 それにしても私たちは「文明人と未開人」という尺度しか持っていない。歴史は一方的に未開から開発に流れると信じ込んでいる。 |
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