「マラッカまで60RMでどうだ」と、その運転手は声を掛けてきた。大男である。 60RMっていくらだっけ。ひさしぶりのリンギットなので通貨感覚を失っている。とりあえず「それは高い」と返事すると、ドライバーは高くない高くないと大声でしゃべりながらなにやら書類のようなものを差し出した。 |
見ると、自分がリムジンの正規ドライバーであることの証明書だ。シンガポール駅で見た案内板にはもう少し安い値段が書いてあったので、「リムジンは要らない」と答える。しかしドライバーはひるむことなく「この駅にはタクシーは自分しかいない」と言い張るのであった。 |
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この駅、TAMPINはマレー鉄道の小さな駅である。位置としては、もうクアラルンプールに近い。 いま手元に残っている切符を見るとシンガポール駅0815発、タンピン1209着と記されている。時刻は正午過ぎ。日付は98年3月25日。東京では私の3月分の給料が入金されているだろう。 |
タンピン駅で降りたのは、ここがマラッカにいちばん近い鉄道駅だからで、案内ではここからマラッカまでバスがあるはずだった。しかし、思いがけず小さい駅でバスも見当たらない。このドライバーが言うように他のタクシーも見当たらない。 降りる客もほとんどいないので、このクルマが行ってしまえば次がいつ見つかるかわからない。しょうがないので、そのリムジンに乗ることにした。 |
おしゃべりな運転手で、日本人はこれまでにも何人も乗せたとかお礼の手紙をもらったとか言って見せたがるので少しうんざりする。マラッカも案内したがっているのは明らかだが、うるさいから案内所まで行ってもらってそこで降りる。 60RMは2,142円である。多少ボラれたか。 |
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