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しかし案外落ち着いていた。私の全財産は4万円と40ドルほどになっていた。日本でこれでは大変だが、ここならまだまだ使いでがある。最悪、捨て値で換金しても1万円もあればスラバヤに行けるだろう。まあ、ともかく両替できそうなところを探そう。私はまずは空港に行くことにした。 |
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ホテルからタクシーに乗る。言葉は通じないが「空港」だけはわかるらしい。さっきのペルニの横を抜けてクルマはアカシアの並木を空港に向かう。 ウジュンパンダンのアカシア並木は実にきれいである。通りが狭く交通量が少ないのがまたよい。数日後にスラバヤでアカシアの大通りを見たが、高名なその通りよりウジュンパンダンのアカシア並木のほうが数倍好ましかった。 |
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空港に近づくと異常を感じた。空気が騒然としている。人々が顔色を変えて走る。黒い煙が見える。事故だ! 急いでクルマを降りてその方向へ駆けつける。滑走路と外界を分ける金網のあたりに人が群がっている。赤や白の車輌が集まって行く。茂みに飛行機が頭を突っ込み、黒い煙を上げている。煙はまだ濃度が高く、飛行機のすぐ近くに漂っている。事故の直後に間違いない。 |
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どうやら離陸に失敗して茂みに突っ込んだらしい。飛行機の先頭はぐしゃりとつぶれていた。ボロックである。ひょっとしたら月曜日に私が乗るはずの便かもしれない。 それにしても空港の職員にも作業員にも「よくある交通事故」程度の緊張感しか感じられない。こういう事故は珍しくないのだろうか。 |
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空港のロビーに両替商はなかった。ゆっくりしてもいられない。もう土曜日の午後である。タクシー乗り場で「銀行」と告げる。 「どこの銀行だ」 「外貨両替」 OK、と係員に指示されてクルマが向かったのは昨日のEXIM BANKだった。いや、そこじゃだめなんだ。もう少し行ってくれ。言葉が通じないのに、こんな場合の「よい銀行とわるい銀行の区別」など伝えられるものではない。運転手が混乱してきたので、私は適当に降りることにした。 |
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