Zamboanga
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いったいどうやったら辿り着けるのか。
幻想的な湖畔の村、タルクサンガイ。

タルクサンガイ ランタカホテルには小さなキオスクと旅行サービスがある。そこで「ザンボアンガ周辺の観光地」を見ていたら興味深い写真を見つけた。

イスラムのムスクが水の中に立っており、その前をカヌーが通っている。なんだか不思議な景色だ。

ツアーの料金を聞くと1500ペソ(4,800円)。ホテルの部屋より高い。自力で行くことにする。まるで土地勘はないが、なんとかなるだろう。「TALKSANGAY」というその名前を紙に大書して持って行く。

タルクサンガイはザンボアンガの東にあるらしい。
町の東側でバスの発着所を探すのだが、他の行き先ばかりである。探し歩いていると、疲れた様子を見たのかトライシクルが近づいてくる。

「どこへ行くんだ。乗れ」
「いや、いらない。ところでタルクサンガイ行のバスはどこに停っているか知らないか」
「この道の先だ。乗って行け」
「いくらだ」
「5ペソ」

ようやく見つかった。5ペソ(16円)で行けるくらい目と鼻の先にあったのだ。


村のムスク ジプニーは東へ向かう。
道から山までずっと水田だ。フィリピンにも、思いがけず大きな平野がある。山を越えると曇ったような湖沼地帯に入る。干潟がひろがる、湿った半島の村で降りる。 海藻を干す匂いがする。

子供たちが声をかけてくる。ギブ・ミー・マネーという子もいるが、ただ「ハロー」といってきて、「ハロー」と返すと通じた通じたと歓声をあげるような子が多い。概してしつこくはない。外国人を珍しがっているだけのようだ。凝ったデザインの凧を灰色の空高くあげている。風が強い。

半島の少し広いあたりにムスクがあった。夾竹桃のような花潅木に囲まれている。

ここだけなぜか空が青い。異次元にいるような感じだ。回教の帽子をかぶった男が礼拝に来る。小さな村なので閑散としているが、静かなおもむきがある。敬意を表して中には入らず周辺でしばらく過ごす。



網を打つ老人 ムスクの裏手に入江がある。ムスクの裏口が船着き場だ。入江に沿って歩くと老人が網を打っていた。

あまり口をきかない村人が家のなかからじっとこちらを見ている。
足元をたくさんの猫が歩いていく。

さっき乗ってきたバスが帰ってきた。顔見知りになった運転手が「乗るか?」という顔をする。「おー、乗る乗る。停めてくれ」と身振りで伝えると、にかっと笑う。ちょっとは仲間になった気がする。

屋根の上に穀物の袋を山のように積んでいる。この先に農家の村があるようだ。

帰りの道は早い。湖畔の村を離れると色彩が戻ってくる。山の途中に粉打小屋があり、穀物の袋はそこで降ろされた。


c 1998 Keiichiro Fujiura


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