ふじうら旅日記

4日目 その1






メンフィスに着いたが外は暗くタクシーは来ない。
難儀な旅にしてしまったなあとにんまり笑う。

4日目 10月07日 火曜日

5時頃目が醒めた。ダイスケ君がシャワーをする音が聞える。電話ボックスくらいのトイレ兼用のユニットで、便座に座ったままお湯を浴びる仕組みだ。レバーをえいえい押すとお湯が出てくるらしい。私は自分でやらなかったから詳しいことはわからない。ダイスケ君は山登りをするのでこういう不便な仕掛けにわりと慣れている。

6時25分、メンフィス着。プラットフォームの横がそのまま駐車場になっている。どこからでも降りられる。柵もなにもない。日本の「駅」の概念とはずいぶん違っている。乗り換える電車などないから、列車を降りてしまえばもう客を囲う必要はないんだろう。

ともあれ駅舎へ行く。この駅に着く列車は一日二本(上下一本づつ)なので、そのときしか駅も開いていないらしい。

メンフィス駅の夜明け
まだ外は暗い。

駅の一角に「ハーブ&ハーモニー」という有機食品店のような店があった。 聞くと「開いている」というので、そこでコーヒーとサンドイッチを頼んで、外が明るくなるのを待つ。
ハーブ&ハーモニーのお店の人にタクシーを呼んでもらって表で待つが、なかなかやってこない。しかたなくトロリー(路上電車)でビールストリートまで行って、あとは荷物を抱えて歩くことにした。トロリーの料金は60セントである。
ハーブ&ハーモニー
朝のビールストリートで。おもしろい映り込みになった
ところがビールストリート付近は工事中で、ガイドブックでツーリストインフォメーションとなっていた場所は警察博物館に改装中だった。 早朝なので人も少なく、工事人に近所のことを聞いても埒があかない。

「もう一度トロリーに乗ってミシシッピ川沿いにあるビジターセンターに行こう」と計画を変更する。

やれやれ、難儀な旅にしてしまったなァ。とけっこう大きな荷物を抱えて、工事現場の傍を汗をかきながら歩く。ダイスケ君は困ったような不満そうな顔をしているが、私は心中なんとなくにんまりしはじめていた。このくらいのトラブルがないと旅した気にならない。



まったく知らない町の地図が少しづつ頭の中にできていって、そのうちによく知った町になるのは楽しいものだ。

「知らない」ことの中には地図だけが含まれるのではない。例えば電車の乗り方だってそうだ。
トロリーの路線図
電車を待っていたら、隣に立っていた大男に「小銭を持ってないか」と聞かれた。タカリか?とちょっと身構えたが、そうではなくて「両替できないか」と聞いてきたのであった。私は自分の分の60セントはなんとか小銭で持っていたが相手の分までは両替できなかったので、そう伝える。

ビールストリートのTシャツ屋
ヲサム君も「1ドルしかない」というので、深く考えもせずに「販売機に入れれば」と答えてしまった。さっきトロリーに乗ったとき見たのだが、正確にいえば販売機ではなくて支払機というか、お金を入れるだけで切符は出てこない機械にコインを入れるのである。たぶん運転手のほうに表示があってちゃんと入れたかどうかはわかるのだろう。

下にある車内写真でヲサム君とダイスケ君の間にある緑の機械がそれだ。
メンフィスのトロリーには「MAIN STREET ONLY」と「RIVER FRONT」のニ系統があって、ミシシッピ川方面に行くには「RIVER FRONT」に乗らなければならない。ビールストリート駅のあたりではふたつとも同じ線を走っている。

「RiverFront」の電車が来たので乗り込む。私は用意していた60セントを機械に入れる。ダイスケ君もそうする。大男は運転手のほうに行って両替をする。ヲサム君が1ドルを支払機に入れて、「?」。なんだかちょっと間があった。おつりが出ないのだ。

するとさっきの大男が戻ってきて「だから小銭が要るといっただろう」といいながら、20セントだけ入れてしまった。

トロリーの席に差す朝光
ありゃりゃー。よく様子がわからないもんだから、40セントかすられてしまったよ。

ヲサム君も一瞬憮然としたのだが、少し経つと笑い顔になった。「勉強になりました」。まー、こういうのもまた旅なんである。




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