ふじうら旅日記

4日目 その3






レンタカーを借りたけど、歩いてメンフィス探索。
ロック'n'ソウル博物館で黒人音楽の歴史を学ぶ。

エイヴィスレンタカーは球場のすぐ近くにあった。朝の予約をしていたのに、行ったらまだクルマは用意されていなかった。だいぶ待たされそうなので近くの食堂へコーヒーを飲みに行く。オフィスビルの中の目立たない店で、客は近所の人ばかり。東洋人客はじろじろと見られた。大都会だとこんなことはないから、メンフィスは案外田舎なんだろう。

クルマは適度にくたびれた4ドアセダン、シボレーインパラだ。

ヲサム君が運転することになっているのだが「できるだけ乗りたくないなあ」という様子。これは少し計算が違った。嬉々として「アメリカをクルマで運転、くーっ、かっこいー」というノリになるかと予想していたのだけれど、ヲサム君アメリカ初運転にかなりプレッシャーがかかっているらしく、ガチガチに緊張している。

とりあえずアメリカンドライブに慣れるために少し町を流す。「うー、緊張するなあ。街中は運転したくない」とヲサム君が言うので、クルマはホテルの駐車場にいれることにした。ホテルの前に停車してベルボーイを呼んでくると、「あれ?」クルマがいない。そこにいたダイスケ君に「どうしたの」「もう一周してくるそうです」ふーん、かなり平常心を失ってるなァ。

ホテルの駐車代は一日5ドル。プラス出し入れするときのベルボーイのチップ、である。

クルマはホテルに残して、てくてくとメンフィスの町を歩く。目的は「ドライブマップ探し」だ。AVISにもメンフィスの小さな地図はあったのだが、ニューオリンズまで走るのにもう少しちゃんとしたドライブマップがあったほうが良い。

ギブソンのギター工場
埃っぽい町を、地図を探してとりとめなく歩いていると、ギブソンのギターファクトリーがあった。
建物のなかに入ると、受付はどでかいギター。2階が「ロック’n’ソウル・ミュージアム」になっているのでそこに入る。

ヘッドセットを付けて、表示の番号を押すとナレーションや音楽が聴ける仕掛けだ。たくさんの展示がそれぞれ別の音を出していてもこれならお互いに干渉しあわない。ナレーションの日本語訳パンフレットもあって、なかなか親切である。あいにくパンフレットは二部しかなかったので、ときどき交換しながら進むことになった。
チケット売り場はでっかいギブソン335
ブルースの始まりから、公民権運動まで、メンフィスでの出来事を中心にブルース、ロックンロール、ソウルミュージックの歴史を展示している。珍しいエピソードも多いし、なにより実物の楽器や本人の着ていた服が展示されているので説得力がある。

ジジメタルジャケットで金がないベースマンが弾いていたモップと盥(たらい)ベースの実物があったので、にんまりする。これも貧乏な黒人ミュージシャンの工夫で生まれたものだろう。
盥ベース
BBキングが弾いていた”モノホン”のルシール
私にとっては懐かしい音楽が多く、その「実物」を見ておおいに心踊っているのだが、若い二人はどうなんだろう、とちょっと気になった。

おじさんの趣味に無理やりつきあわされて迷惑していないかな?と表情をのぞいて見たのだが、案外興味深そうにしているので安心する。まあこの旅全体がそうなのだから、こんなところでちょっとばかり気を使ってもしょうがないのだけど。
ヲサム君とダイスケ君にとっては絶好の「黒人音楽案内」になったらしい。

ダイスケ君はソウルミュージックの曲名パネルの写真を撮っていたし(ジュークボックスになっていて、好きなだけ曲が聴ける)、ヲサム君はサックスのR&Bに「この曲いいですよねー」と言っている。ヲサム君はサックスを習っているので、やはりサックスに耳がいくらしい。
ヘッドフォンで好きな曲が聴ける。
その「かっこいい」といっていたバンドはマーキーズ(The Mar-Keys)である。私もここで出会うまで知らなかった。サックスはチャールズ・パッキー・アクストン(Charles "Packy" Axton)。ひとことでいうと、ヴェンチャーズの曲をギターでなくサックスでやっているようなサウンドだ。もちろん古いスタイルなのだが、サックスがえれえ格好いいんである。

ヘッドフォンのなかでそれぞれが違う音を聴いている。出口近くになるとだんだん最近の音楽になってくるので、黒人の女性など踊りながら歩いている。

公民権運動のところで、また別のかっこいいサックスを聴いた。ベン・ブランチ(Ben Branch)の吹くゴスペル曲「Precious Lord, Take My Hand」だ。殺気立った群集を静めるためにキング牧師がベン・ブランチに「次の集会で吹いてくれ」と頼んだ曲だという。キング牧師はその集会に参加することなく暗殺されてしまったため、この曲を聴くことができなかった。キング牧師の葬式でマヘリア・ジャクソンがこの曲を歌った録音は有名だが、そのもととなったベン・ブランチの演奏はこのミュージアムで初めて聴いた。

BBキングのコンサートポスター
ばらばらな知識がメンフィスという土地の上で並べられてつながっていき、少し整理された気がする。




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