Baduy
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鶏鳴がバドゥイの朝を告げ、
女性用サロンを身に巻いた旅人は渋々起きる。

夜が更けた頃、ここのお婆さんナシナ夫人とドンさんがなにか話している。
「マッサージを受けたいか、と言っています」

バドゥイのマッサージ?それは試してみたい。ぜひと頼むと「近所のおばさん」という感じの女性が来た。上半身裸にして床に寝せ、なにやらタイガーバームのような香油を塗る。古式ゆたかな感じがしてなかなかよい。あまり強いものではなく、どちらかというと表面をなでるのに近い。おばさんは一人5000rp(71円)づつをもらって帰っていった。黒バドゥイの世界では貨幣や商売はもう普通のものになっているようだ。


布団の代わりに使ったのは、ここのお婆さんが染めた糸で作った巻布である。紐のないだぶっとした腰巻きで、余ったところを結んで締めるあれだ。インドネシアでサロン、ラオスでシン、ミャンマーではロンジーという。バドゥイでなんと呼ぶかは聞き忘れた。


女性用のサロンなので胸高である。腰に巻いて寝るというより、サロンの中に入って寝るという感じ。熱帯では充分簡易の寝袋くらいの役に立つ。居間に雑魚寝しているのだが、竹で編んだ床の上に薄い布を敷いてあるだけなので、寝ている背中の下を風が抜けていってすこぶる気持ちいい。快眠した。



ガジェボ村
ところが、朝早くから床下がうるさい。こっこ こっこ。鶏である。昨日のダイトウさんに刺激されたわけでもないだろうが、まだ暗いうちからにぎやかだ。とうとうコケコッコー!と大きな声で鳴き始めた。これはたまらん。みんな山歩きで疲れていて多少のことでは起きそうもないのだが、それでも寝ていられないほどうるさくなった。


ともかくも起きて、なにもすることはないから縁側で足をぶらぶらさせている。新聞もテレビもない。ただただぼーっとしているのがここちよい。




c 1998 Keiichiro Fujiura


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