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帰り道は案外平坦な、湿地帯のようなところを抜ける道。田んぼで田植をしている。田に雑巾をかけるように丹念に準備をしている。昔々見たような光景だ。 |
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「ヤングココナツを飲むか?」 と言い出した。 「ああ、飲みたいね。どこにあるの?」 「見ていな。こいつはココナツ取りの名人だ」 と、もうひとりを指差す。 |
![]() どこに名人がいるか、わかりますか? |
名人は椰子の木を下から睨み、適当な一本を選ぶと、山刀を口に加え両手に紐を持って木の下にすすむ。その紐を幹に掛け、すいすいと登りはじめた。 なるほど速い。上のほうに行って葉の陰に入ってしまうと椰子の実も彼の頭も見分けがつかなくなる。 |
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どすっ と椰子の実が落ちてきた。ほとんど同時に4個の実を落し、名人はするすると降りてきた。 「その実を貸して」 名人に椰子の実を渡すと先ほどの山刀でさくさくと外皮を落し、器用に飲み口を作ってくれた。 |
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美味い。これが若いココナツの果汁か。町で売っているものよりあっさりしている。ほどよく青臭く、コクはミルクのようだ。 あまり美味いので割ってもらって内側の白い膜皮まで食べた。竹の子のような口当たりである。椰子の実というのは上に付いているものほど甘いのだそうな。 |
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水田があって耕作をしているところを見ると、このあたりはバドゥイの領域ではなくてインドネシア国内らしい。 |
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農家の前を通ると若い女が穀物を打っていた。乾かした稲を叩いて籾を落している。ドンさんが「珍しいから写真に撮れ」というが、ダイトウさんはあまり乗り気でもない様子だ。 |
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バドゥイの山中にいる間、湿度は高いものの天候はもっていたのだが、この頃になって雨模様になってきた。空は暗い。ここで降られてはずぶ濡れになってしまう。覚悟を決めて歩いていたら、地元のバイクの一行に出会った。小さいバイクだがエンジン全開、暴走族のような兄ちゃんたちである。ドンさんがすばやく交渉して、クルマの場所まで乗せてもらうことになった。 |
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すごいすごい。タイヤもサスペンションも舗装路用なのに泥道を全開で行くから、跳ねるわ滑るわサスは底打つわ。がつんがつんいいながら後部座席にしがみついていった。 |
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ロケ車に乗り込んでからも大変である。雨のせいで急に道が柔くなったので来たときのように帰れない。かなり苦労をしながら、入口の村に戻った。 |
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