Baduy
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電線の終わるところ、文明が終わる。
バドゥイとの境界は、ごく簡素な柵であった。

道がだんだんせまくなってきた。山から山へ細い電線が渡り、それをなぞるように道路がうねっていく。
「まだ電線がある。しかしこの電線がどこかで途絶える。その先がバドゥイの村だ。」

電線の終わるところ、文明が終わる。妙に感傷的な気分だ。どこか遠いところ、未知の世界に入ってしまうような感じがする。

電線がときおり谷底へ引き込まれる。その先に家か、それともなにかの作業所でもあるのだろうか。谷は険しく底は見えない。



インドネシアの子供
クルマは行き止まりの村についた。そこから先は道がない。電線もここまでしかない。


希望の像 クルマが引き返せるように、広場は小さなロータリーのようになっていた。輪になった道路のまんなかに銅像がある。空を指差す子供たちの像。妙に希望に満ちている。共産圏のプロパガンダのような、政治の匂いのする像だ。


コカコーラの瓶を大切そうに並べた商店の脇の道を入って行く。ただの路地のようだが、これがバドゥイの世界への入口だ。



バドゥイへ向かう坂道
道はゆったりとした勾配の登りである。はじめは石の階段がついていたが、途中から土の道になる。


ほんの数十メートル奥に入ったところに、小さな草の柵があって道を狭めている。公園の入口の自転車除けくらいの大きさだ。

「ここから先はバドゥイのテリトリーだ」

非常にあっさりした、はかないくらいの柵である。物理的な境界というより、しめ縄のような精神的な境界なのだろうか。




c 1998 Keiichiro Fujiura


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