Baduy
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バドゥイには白バドゥイと黒バドゥイがいる。
ここはまだ、ほんの入口にすぎない。

村長をはじめ、この村落の人は黒い服を着ている。ジャロ・パマレンタが頭に巻いているターバンも黒い。これは「外バドゥイ」と呼ばれる人々である。バドゥイの中心を成す村落の人々は「内バドゥイ」と呼ばれ、彼らのみが白い服と白いターバンを身につけることができる。

便宜上内側に住む生粋の人々を「白バドゥイ」、外界と接しているこの村落の人たちを「黒バドゥイ」と呼ぶことにしよう。


黒バドゥイの娘たち
白バドゥイは私たちから見ると非常に厳しい戒律の世界に住んでいるが、その最も重要なものは次の四つの掟である。

米を盗んではならぬ
姦淫をしてはならぬ
喧嘩で血を流してはならぬ
乗り物に乗ってはならぬ

このひとつでも破ると、村を追放になる。追放になったものはどうするか。黒バドゥイとなるのである。したがって、ある意味では黒バドゥイは「堕落したバドゥイ」と言える。しかしすぐ外界に市場社会があるのだから、黒バドゥイが緩衝地帯となって純粋な白バドゥイの世界を守る役割を持っている、ようにも感じられる。


外界に接する「入口の村」といえども、バドゥイの村なので電気はなく戒律は生きているようだが、子供たちのなかには英文字入りのTシャツを着ているものもいる。どうしても外部の影響は避けられないのだろう。



本日の予定は、この村でなく少し奥地に入った村での宿泊である。一休みしたら山歩きを始めなければならない。

ドンさんが、我々の荷物を運んでくれる「ポーター」を頼んでおいてくれたという。ほどなく、その3人が来た。これがなんと白い衣服、白いターバンを身につけている。白バドゥイだ。こんなに早く白バドゥイに会えるとは思わなかった。


彼らは裸足だ。靴も「乗り物」だから履かないのだという。足の親指が非常に大きい。肉厚の球のようである。足指はひろがっていて健康そうだ。この足で山道をすたすたと歩く。


ドンさんと3人の白バドゥイは知り合いらしく、さっきの右手をかすかに触れ合う挨拶をしている。バドゥイの若者たちは微笑を浮かべるが、やはり私たちと視線を合わせることは避けている様子だ。



挨拶もそこそこに、彼らは我々の荷物を竹の棒にゆわえて、駕籠を担ぐように歩き始めた。竹の棒がたわむほどの大荷物である。それを担いで山道をさっさと進んでいく。速い速い。私たちは自分の小荷物を背負っているだけなのにあっという間に置いていかれた。


目的地は二つほど山を越えたところにあるガジェボ村という村落である。

途中「バドゥイの川」「バドゥイの丘」を抜けていく。危惧していたほど険しい道ではないが、かなりの登り降りだ。山道を上がっては下がりしながら進む。滑りやすいところも多い。一休みして首のタオルを絞ると汗が地面にしたたり落ちる。


途中、自生の稲、コーヒーの木、ランプータン、ドリアンの木を見る。バドゥイは耕作はしないというが、自然の恵みとしてこれらを採って食べるのだろう。


ふうふう言いながら目的の家に着いたときには、バドゥイの若者三人はとっくに荷物を降ろしてソソロで涼んでいた。




c 1998 Keiichiro Fujiura


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