|
夜更け、トイレに行きたくなった。ここの便所は水シャワーと同じ小屋でいつも濡れていてあまり清潔な感じではない。バドゥイの村を思い出して、メコン川の河岸を降りていった。 |
|
幸い月はもう隠れていてあたりは暗い。足を滑らせて流されたりしなければ誰にも見つかるまい。 |
|
岩場に服を置いて川に入る。水底の様子がわからないので慎重に。足下は砂利のようだ。案外浅い。腰ほどの深さのところでで屈んで胸まで水に浸かる。土色の速い流れが身体を通りすぎていく。すこぶる快適である。 |
|
大河での用達を終えて真暗な河原に戻り、服を着終えると突然人の気配がした。ドキッとして「誰だ?」と話しかける。 |
|
女だ。 向こうも驚いたらしい。突然英語で話しかけられて、あわてたのだろう。おかしげなことを言い出した。 「あー、、、今日は私の友達の誕生日なんだけど、これからパーティがあるの。一緒に行かない?」 |
|
たったいま暗闇で出食わしたばかりで、まだお互いの顔も見ていない。しかも私は川便を済ませたばかりである。とてもパーティに誘われるような状況じゃない。当然お断りしてゲストハウスに戻った。 |
|
明るいところで考えると、あれはどうやらビックリした拍子に彼女が「いつも使い慣れている営業用のセリフ」を口走ってしまったんだろう。チェンセンもなかなか楽しそうな町である。 |
| |
|
|
|