ふじうら旅日記

1日目 その3






シカゴの街をゆっくり歩くのは、はじめてだ。
土曜の午後のせいか、人通りは少ない。

実は前にもシカゴに来たことはあるのだけど、そのときは仕事で見本市を見に来たのでほとんどクルマで移動だったし、ホテルのまわりを少し歩いただけで、シカゴの市街をゆっくり歩くのはこれが初めてだ。

見ると橋の入口のところに検問のバーがある。クルマ停めだ。なんのために?
それは橋が跳ねあがるからだろう。さらに観察してみるとどの橋も真ん中に切れめがあった。シカゴ川にかかる橋はすべて勝鬨橋のように割れて船を通せるようになっている。
シカゴ川にかかる橋
それにしても、人通りが少ない。閉まっている店も多い。どうやらビジネス街に休日に来てしまったらしい。

オペラハウスがあった。シカゴは古風な建造物と現代的な建築が美を競っているような街だが、個人的には古風なほうがずっと好きである。オペラハウスの一階に入っているテナントもなかなか味わい深い店構えが多かった。残念ながらほとんど閉まっていたけれど。

ハリーケリーのレストラン

あ、あの店はここにあったのか。
行きたかったレストランをホテルの近くに見つける。

再びシカゴ川を北向きに渡ってHouse of Blues Hotelの近くまで来ると、ハリーケリーのレストランがあった。

この人はもう亡くなったのだが、シカゴカブスの中継をしていた名スポーツキャスターで「Take Me Out to The Ball Game」を球場で歌うことをはじめた人である。

ちょうどよいので今晩の予約をしようと店に入ったのだが、すでに今晩の予約は一杯。それもそのはずでウェイティングバーにもなっているスポーツバーのほうを見たら、カブスとブレーブスの試合がもう始まっていて、バーに足を踏み入れることもできないほどの盛況だった。

「明日の晩なら空いている」ということなので翌日の予約をして、いちどホテルに帰る。エクストラベッドが届いていたので、セットして、テレビで野球の試合を見ながら少し寝る。ゲームは6対4でカブスが負けた。



さて、晩飯はどうしよう。「実はちょっと気になる看板があったんだけどね。タクシーでここに来る途中で見たRed Fishという店なんだけど」「あー、その店、僕もうまそうだなと思ってたんですよ」。ヲサム君と私は表から見て「この店うまそうだな」と思う感覚が似ているらしく、二人ともこの店が気になっていたのである。

Red Fishはホテルからすぐ近くだった。ケイジャン料理なのでニューオリンズに行けば食べられるのだが、まあ、いいやね。あえて牡蠣は食べないで、メインはキノコにした。料理はスパイシーで、外はもう肌寒くなっていたのだが、食べると身体が熱くなるくらい。

各自にじゃらじゃらした安っぽいネックレスみたいなものを一本づつくれたので「これは何?」と尋ねると「マルディグラの飾り」なんだそうだ。ふーん。クリスマスの飾り付けみたいだな。

食べたら元気になったので、少し散歩する。ハードロックカフェやロックンロール・マクドナルドのあるあたりでようやく人通りが多くなった。

耳が冷たくて、このままだと耳の調子悪くなりそうなので、ゆきずりのスポーツ店で毛糸の帽子を買う。このキャップはそういう事情で急いで買ったのだが、高かった上に服に全然合わないので、その後ずっと「バカ帽子」と呼ぶことになった。
Red Fishの近所
そろそろホテルに帰ろうかとした途中、通りの向こうに「Blue Chicago」という看板を見つける。おっ!

入場料7ドル。コロナビール7ドル。ダイスケ君は童顔なので早速IDカードの提示を求められている。彼はその後もいたるところで「IDを」と言われつづけ、この旅のためにとった国際免許証はほんとうに活躍した。ときどきはヲサム君も「見せろ」と言われていたが後半は不精ヒゲが伸びてきたためか言われなくなった。

店に入ると席のないほどの満杯。ほとんどすべての席がうまっているので、立ち見もしにくい。わずかにあったテーブルの椅子に相席となった。地元のベテランプレイヤーらしき男がギターと歌。あとはベース/ドラム/もうひとりのギター。

もうひとりのギターは「ヒロ」と呼ばれていた。日本人らしい。ヒロはB.B.キングの影響を感じさせるギターで、きちんとしているのだが、メインのプレイヤーに遠慮ぎみなのか、やや乗りきれていない印象だ。急造メンバーらしく、各曲のはじめにリーダーがリフ(例えばベースラインを弾く)とテンポを提示し、それにみんなが合わせるというやりかた。それでもドラムとベースのタイミングやニュアンスのつけかたはちゃんと一致していてたいしたものだ。

女性ヴォーカルが加わったあたりで眠くなって、椅子に座ったままこっくりをはじめたので退場。この店は今夜はオールナイトでライブをやるらしい。

ホテルに戻ったらヲサム君は「どうしてこんなに疲れたのかな」と言いながら、すぐ眠ってしまった。



私も眠くはあるのだけど、そうもいかない。ダイスケ君がシカゴに来る前から「ぜひ行きたい」と言っていたクラブがあるので、そこにつきあう。このあとの旅路はブルース三昧で都会的な音はシカゴだけだし、明日は日曜だから、クラブに行くなら土曜の今日なのである。

そのクラブは「Big Wig」といって、タクシーで8ドルくらいのところにあった。

予想していたよりも店の周囲の道が明るく、治安も悪くなさそうなのでちょっと安堵。夜の遠出は気を使う。アメリカが初めてで英語もあまり得意でないダイスケ君をひとりでやるわけにはいかない。

11時くらいだったが、まだ盛り上がるには早いと見えて、踊る人もいない。2階をプライベートパーティに使っていたせいか座る席もないくらいの満員なのだが、全体にぼーっとしている。「機が熟していない」のだろうか。

フライトであまり寝ていないし、明日も朝から動くので、ダイスケ君には悪いけどそこそこでホテルに帰った。





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